「勉強は学生まで、社会人になったら仕事に集中」が当たり前、平日は毎日朝から夜遅くまで仕事!の日本人の生活が変わろうとしています。
同じ会社で奉職していれば自動的に昇進と昇給が約束されていた「終身雇用」が維持できなくなったためです。
国は1992年のバブル崩壊から全く上がっていない平均賃金を上げることをほぼ諦めている状況です。
この停滞する日本経済を背景に推進されてきたリカレント教育とは、学校教育を卒業して就職した後も、仕事と教育を繰り返して自分の能力を高めていく学び方を指します。
結果として、雇用者はジョブ型雇用で有用な人材を確保し、被雇用者は転職を繰り返すことで自ら昇進と昇給を獲得していきます。
もともとスウェーデンの伝統的な生涯学習機関「コンヴックス」が元になっている考え方ですが、スウェーデンでは現在、年齢に関わらず誰もがいつでも様々な形態で気軽に学ぶことができる「学習社会」が実現しています。
日本でも、総務省、厚生労働省、文部科学省など複数の省庁がリカレント教育の重要性について呼びかけるようになりました。終身雇用制が崩壊した日本で今後更に重要となっていくリカレント教育について一緒に考えてみませんか?
リカレント教育ってなに?
リカレント教育とは、学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで再び教育を受けて、仕事と教育を繰り返すことで自分の能力を高めていく働き方のことです。
英語の「recurrent」は、「循環する」「再発する」という意味ですが、定期的に学び直すことでスキルアップを図り、会社の中での昇進を目指したり、転職を有利に進めようとする人達が、増えてきています。
日本では古くから、仕事をリタイアした後でも学習をしてライフスタイルを豊かにする「生涯学習」が提唱されてきました。
では、リカレント教育と今までの生涯学習は何が違うのでしょうか?
生涯学習は、人が生涯に行うあらゆる学習や文化活動、スポーツ、趣味などを指しますが、その中の一部にリカレント教育が位置します。
リカレント教育は、「働くこと」が前提となる学び方で、仕事のスキルアップ、キャリアアップを目的とした学習に限って使う言葉になります。

なぜ国や企業はリカレント教育を呼びかけ始めたのか?
日本の経済成長率は世界109位でかなり低い水準です。
経済成長率の考え方は国民総生産(GDP)がベースになっています。GDPは、国全体の生産力を表しますので、少子化が進む日本では、人口減にともなって低くなるのは当然です。
では、私たち一人当たりの豊かさはどうでしょうか?
一人当たりの生産力を図るためには、GDPを国民一人当たりに換算した「一人当たり名目GDP」が指標となります。

「一人当たり名目GDP」で見てみると日本の順位は世界19位、なかなか検討しているようにも見えますが、1995年には世界3位でしたので、世界レベルで見ると、日本は山を転がり落ちるような経済的な転落をしている状況です。
この「一人あたり名目GDP」の低下は、高齢者人口の増加、デジタル化の遅れによる労働生産性の成長不足が主たる原因だと言われていますが、このままの低下が続けば、2027年に韓国、2028年に台湾を下回ることが予想されています。。

日本は人口が多いからGDPは世界3位!
でも国民一人当たりのGDPは毎年下がり続けてるよ
経済成長率の低下は、日本のサラリーマンの年収にも影響をしています。日本のサラリーマンの年収は上がるどころか、90年代と比較して下がっている状況です。
日本の経済成長が停滞している状況は「正社員になれば同じ会社で一生働き続けられる」という日本型のワーキングスタイル崩壊のきっかけになりました。
転職を繰り返してサラリーを増やしていく欧米型の働き方を、日本企業がポジティブな理由で積極的に採用しようとしているようにも見えますが、実のところ、今の日本企業は労働力が低下した社員を維持するだけの体力が無くなってきているのが現状です。
企業だけではなく国も、経済を成長させる有効な手段を持っていないため、今までの経済成長を基盤とした日本型雇用から、企業が流動的に人的資源を使える欧米型の雇用スタイルに働き方を切り替えていこうとしています。
私達は自分たちの生活を守るために、一つの企業に所属して定年まで働く勤め方から、仕事と学びを繰り返してスキルアップや資格取得をしながら自分の収入や経験を増やしていく考え方に切り替えていく時期に来ていると言えそうです。


労働者として「リカレント」にはこんなメリットが!
働く場所を増やして、可能性を広げる
専門性の高い教育機関を卒業して仕事につく人はごく一部で、多くの方が高校や大学などで学んだ専攻内容と卒業後の仕事が一致していないのではないかと思います。
株式会社ディスコが実施した2018年に卒業予定の大学4年生のうち就職先企業を決定した人761人を対象に実施したインターネット調査では、文系の学生の46.8%が、専攻分野と就職先に関連性は「あまりない」又は「ない」と回答しています。


大学までの教育とは別に、仕事をしながらもしくは今の仕事を一時的に辞めて専門性の高い教育を受け直して、スキルアップを図るのがリカレント教育の考え方です。
今の仕事の内容やサラリー、人間関係などにストレスを感じながら仕事続けるよりも、再教育を受けて自分にあう仕事を選び直す人が増えてきています。
高い専門性を身につけて転職や再就職を容易にする
仕事の中には、特定の資格を有していないと業務を行えない仕事が多数あります。
代表的なものが「宅地建物取引士」、「行政書士」などの業務独占資格です。
「不安定な雇用」、「見通しのたたない再就職先」、「安価な給料」などの労働に関する不安な要因を、リカレント教育により有利な資格やスキルを身につけることで解決することが可能です。
年収を増やす
エン・ジャパン株式会社が、自社サイト「ミドルの転職」上で実施したリカレント教育のアンケート調査では、年収1,000万円以上の会社員の約6割がリカレント教育を実施していると回答がありました。
これまでリカレント教育(学び直し)を行ったことがありますか?


リカレント教育を行う理由のトップになったのが「専門的な資格の取得」(47%)で、就職後でも資格取得のために学び直しをすることが年収の増加につながっていることがわかります。
具体的にリカレント教育でどのようなことを学ばれましたか?(複数回答可)


会社の中での出世、評価向上
高度成長期からバブル期には、残業時間に制限がなく、働けば働いた分だけ残業手当が支給されていました。また、成果を上げれば確実に昇給し、年収の増加につながっていました。
当時は、会社のために生活のすべてを捧げて仕事をすることが良いサラリーマンとされていました。
今では、薄給で長時間労働を強制するブラック企業が蔓延っています。
ブラック企業の労働者は、「社員は、会社のための消耗品」という考え方に基づき昇進や昇給と関係ない長時間労働を強制されています。
今の日本では、「働いた時間=会社の中での出世や評価向上」の考え方が成り立たなくなってきました。



働いても働いても昇給しないよ(T_T)
会社の中での評価を高め、収入の向上を図るために、「学び直し」による資格取得、スキルアップの重要性は増しています。
リカレント教育により外部の会社でも通用するスキルを高めることができれば、会社内での昇進、昇給が望めるだけではなく、不測の事態で会社にいられなくなったときにも焦らずに再就職に臨むことができます。
「言うのは易し、行うは難し」リカレント教育が進まない理由
会社の理解が得られない
終身雇用制が当たり前だった時代の経営者には、会社に忠誠を尽くすことを美徳と考える人が多いのが実情です。
本業に支障をきたすという理由で、社員の学び直しに否定的な経営者や上司はまだまだたくさんいます。
会社の協力が得られない場合は、会社に在籍しながら大学などの教育機関で学び直しをすることはかなり困難です。


「学び」のための時間が確保できない
日本では、長時間労働が当たり前です。サラリーマンの多くは一日8時間以上、残業が常態化している職場では12時間以上働くことも珍しくありません。
会社員を続けながら学び直しをするためには、自分で時間を作るしかありません。
長時間労働が続く中で学び直しのための時間を確保することは強い意思の力が必要となります。
そもそもリカレント教育を前提とした社会になっていない
仕事とリカレント教育を両立することが当たり前のスウェーデンなどの国と異なり、日本では「リカレント教育」の言葉自体知られていません。
労働者が主体的な学びを行うための国の支援事業は、厚生労働大臣の指定を受けた講座を受講する際の「教育訓練給付金制度」ぐらいしかないのが実情です。
国はホームページ等でリカレント教育について推進していく姿勢を見せていますが、そのための制度はまったく追いついていないのが現実です。
\教育訓練給付金制度について詳しく知りたい方はこちら/
それでも社会人の学び直しを呼びかける理由は?
「勉強したい!」と強い意思があっても、リカレント教育についての企業サポートや政府の支援制度などは十分に整っているとは言い難い状況です。
また、会社の同僚や先輩、上司の理解も得られないかもしれません。
たとえそのような状況であったとしても、当サイト「まなびどき」では、オンラインスクールを利用した社会人の学び直しについて強く推奨していきます。
資格取得やスキルアップのための自分に対する投資は、景気の低迷やその他の社会不安の影響を受けずに、その人自身の将来的な利益に必ずつながると信じているためです。
ネット環境が整っていない時代は、仕事終わりに英会話スクールに立ち寄ったり、資格予備校に通う会社員がたくさんいました。
今では、通学のために無駄な時間を使ったり、高額な授業料を払わずに、自宅にいながらリーズナブルな受講料でスキルアップのための学習をすることが可能です。
今の仕事を続けることに不安を感じている方やもっと自分の能力を生かした仕事がしたい方は、まずは自分が何に不安や不満を感じているのか、自分が何をしたいのかについてよくお考えの上、一度は「学び直し」についてチャレンジしてみることをおすすめします。
たとえ、思ったように時間が確保できないなどの理由で結果的に学び直しがうまくいかず、資格取得などの成果につながらなかったとしても「勉強」をして、知識や技術を手に入れたことは決してマイナスにはなりません。
リカレント教育は、人生において成功と幸せを手に入れるための非常に有効な手段であることは間違いありません。


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